目の前の事象でもうパニックになって、選択肢が見えなくなる。
一旦やめてリセットしよう、そう思って、会社を辞める。
そこから出口のない日々が始まる。
筆者は32歳から家族の介護を始め、介護離職を経験し、大きく苦しんだ。
「介護が始まったからといって、会社を辞めてはいけない」という。
介護離職の中心層は40代から60代。
一度仕事を辞めてしまうと再就職は容易ではない。
課長クラス以上の介護離職者も3割を占めており、彼らの突然の離職は、企業にとっても損失であろう。
高齢者の人数が増え、何らかの介護が必要な人数も増えていく上、介護をする側の年代は若い世代にも広がっている。
ヤングケアラーと呼ばれる30歳未満の介護をする人は20万人とも。
人生の大切な時期を、家族の介護のため「だけ」に費やしてしまうのは、本人にとっても、社会にとっても損失だ。
介護離職に至る過程は人それぞれだ。
介護が必要となってすぐに辞める場合もあれば、ギリギリまで頑張った上で気持ちが切れてしまう場合もある。
本書にはさまざまな事例が取り上げられており、介護に直面されている方には自分の状況に似たケースがあると思われる。
離職後の苦難について、離職の決断をする前に知っていただきたいし、願わくば離職という決断は控えていただければと思う。
介護離職に追い込まれてしまう要因に、「隠れ介護」もある。
一人で抱え込み、気持ちが切れて離職に踏み切ってしまう。
介護離職をする年代は働き盛りが多い。
企業側も、普段から社員の介護の状況を把握し、支援していく姿勢を伝えることで、隠れ介護からの突然の介護離職を防ぐことができる。
「両立しよう」ではなくて、「ギリギリ辞めていない」で十分。
介護に使える制度はたくさんある。助けてくれる人もいる。自分が嫌になっても、そんな気持ちを聞いてくれる人もいる。
お互い様の気持ちで、誰かを頼ってみて欲しい。
最後に、「介護をやめる、要介護者を手放す」という選択肢もある、と筆者は述べている。
介護者が笑顔でいることが一番の介護だ。
介護が始まったら、まずは声をあげてほしい。
経験者の話を聞くことは大変参考になるし、本書をその一助として使ってもらえればと願う。
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