妻が家事に専念する、専業主婦という言い方はよく聞かれる。では、夫が専業の「専業主夫」はどのくらいいるのだろうか。
著者によると、今「主夫」は日本に11万人といわれているらしい。正確には第3号被保険者の男性が11万人いるということだ(ちなみに女性は949万人)。
本書では、実際に「専業主夫」として働く男性たちの現状が、具体的な事例としていくつも紹介される。
「専業主夫」からの取材にとどまらず、彼らを養う女性の意見も存分に出てくる。
女性の中でも、大黒柱としてガッツリ稼いでいるタイプと、成り行きでそうならざるを得なかったタイプがあり、両者の間には、温度差がある。
これまでの、女性が家事に専念することが主となっていた時代には、大黒柱として稼いでいる男性の多様性については取り上げられることは少なかったのではないだろうか。
男性においては長らく、大黒柱としての立場への違和感は、弱さとして捉えられがちであり、ましてや社会システムを変えることにはならなかった。
また、一言で「専業主夫」といっても、本書に出てくる中だけでも、さまざまなタイプがいる。
社会的なサポートが十分とは言えない中で、それぞれの家族の最適解として築き上げられたものだ。
裏を返せば、女性が専業主婦として期待されていた時代においても、実際には多様なタイプがあったのだろう。
本書では改めて、これまで女性に求められていた専業主婦というものについて、丁寧に検証している。
そこから浮かび上がるのは、女性に求められてきた専業主婦像も、地獄の道だったということだ。
専業主婦が難なくこなせる女性も多くいたが、違和感を感じる女性も、決して少なくはなかった。
第4章の小島慶子氏との対談では、働く女性が縛られてきた「二重の束縛」が赤裸々に語られ、そのことが結果的に、男性の立場をも苦しくしてしまっていることが、浮かび上がる。
また最近、「イクメン」という呼称がもてはやされていたが、そのことが、これまでの、女性たちへの専業主婦幻想の二の舞になりかねないと、警鐘を鳴らす。
男性に、「仕事も育児も」と求めることは、女性たちに、「家事も仕事も完璧に」と求めていた地獄の再来になりかねない。
出版から5年を経て、男性が育児をすること、男性が育児に関わっていることを表明することは、特別なことではなくなった。「イクメン」という呼称は、一般的な呼称として落ち着いたかに見える。
男性が育児をすることについて、社会的な違和感、特別感は、以前に比べ大きく緩和された。
共働きも、専業主婦も、「専業主夫」も、いろいろな形が選べる。
いろいろな形が選べるように、女性も男性も企業も社会も、常に試行錯誤していく。
それがこれからのかたちなのだろう。
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