現役の理系リーダーである著者が、自らが苦労したリーダーとしての振る舞い方について、理系らしく論理的に分析し、対応策についてまとめられた本。
著者が見出した、さまざまな方法が、実際の失敗エピソードをふんだんに盛り込みながら紹介されている。
まず、理系人間特有の傾向について、7つの項目を挙げている。
基本的に一人で仕事を完結させるのが好き、完璧主義でこだわりが強い、理論的である、分析力がある、効率を重視する、心配性・神経質である、人に頼んだり指示したり断ったりが苦手。
筆者の周囲にいる理系人間たちは、ほぼ全てに当てはまるという。
ひとつ1つならともかく、ほぼ全ての項目に当てはまるとなると、なんだかこじれてしまうのも無理はないかもしれない。
「理系人間は本音をいえばリーダーになりたくない」と言い切り、さらに分析を進めていく。
この章(第1章)が、本書の約半分のページ数を占めているのだが、これくらいのボリュームを費やさなければ、こじれた気持ちはおさまらないかもしれない。
「そもそもなりたくてなったわけではないんだ」と、強く思い込みがちな理系人間たちに、リーダーという仕事に前向きに取り組めるよう、丁寧に地ならしをしているのが印象的だ。
心理学の分野で知られている「認知の歪み」(白黒思考、結論の飛躍、べき思考、過度の一般化、部分的焦点づけ)が、理系人間の特徴とどこか重なるのも、切ない思いにさせる。
研究者・技術者として成果を出しやすいタイプは、コミュニケーションの面においては最適なタイプとはいえないようで、生きづらくなりがちなのだろうと感じられる。
理系人間がリーダーになるには、かなりのビハインドからのスタートなのかもしれない。
だが、こだわりの強い理系人間だからこそ、方向性を見つけることができれば、一気に自走し成長していくことができる。著者は、リーダーのあるべき姿について、新しい考え方を知ったことで方向が定まった。
リーダーの理想像を、「リーダーが率先して行う」という立場から、「チームメンバーのペースメーカーとして見守る」という立場に変化させたことで、コミュニケーションの形も変化し、チームとして成果もあげられるようになった。
全体を通して、理系人間が読めば「あるある」エピソードだらけで、不謹慎かもしれないが、面白いとすら思える。
意図せずしてリーダーを命じられた理系人間、あるいは、望んでリーダーになったもののうまくいっていない理系人間のリーダーに、是非、手に取ってもらいたい一冊だ。
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