タイトル通り、最初に手に取るべき教科書としてちょうどいいボリュームであり、必要十分な内容の本書。
5年ぶりに改訂された。
障がい者雇用には、さまざまな支援の仕組みがあり、理解よりも混乱が先に立ってしまいがちだ。
本書があれば、その時々に必要なことを理解しながら、順を追って、進めていくことができる。
第1章から第3章で、社会的背景や、さまざまな障がいの種類とその特性などが紹介された後、第4章から、実際に受け入れるにあたって企業において注意すべき点が説明される。
根底に流れる考え方として、障がい者のために、新たに仕事を作るのではない、ということ。
普段から行っている仕事の棚卸と業務の細分化を進め、障がい者や制約のある方に可能な部分を分担していく、という発想である。
また、採用にあたってのポイントも見逃せない。
能力以前に重要なものとして、本人の就労意欲と就労準備の確認があげられている。これらは、入社後に企業側がフォローや育成することが困難な部分もある。
忘れてはならないのは、これらは障がいの有無に関わらず厳正にチェックが必要なポイントだということである。障がい者ではない方々、学生であったり、しばらく企業での就労から離れていたりする方を支援する場合にも留意しておきたい。
第6章の、採用後のマネジメントと職場定着において述べられている内容も、示唆に富んでいる。
本書ではあくまで、障がい者の雇用を想定して書かれているが、現在はグレーゾーンの方も増えており、一般採用であったとしても、こういった配慮が必要となる局面は増えてきそうだ。
巻末資料の支援機関や制度についてのリストと合わせて、活用してもらいたい。
本書で唯一の残念なところがあるとすれば、サブタイトルにもなっている「5つのステップ」がどれなのか、一読しただけではよくわからないところ。
第1章が基本的な考え方と概略の説明、第7章が実際に導入した企業の事例なので、第2章〜第6章が5つのステップなのだろう。
細かいステップはともかく、順にざっと読み進めていくだけで、障がい者雇用の準備から採用、職場定着まで、基本的な流れをつかむことができる、良書といえる。
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