こちらも、キャリアコンサルタント2級技能士受験に際して、役立ちそうな一冊。
2級受験に際して、特に実技試験では、カウンセリング技法の理解と熟達が求められる。
カウンセリング技法といっても、どのような技法があるのか、教科書的な理解にとどまらず個別の技法を繊細に理解するには、想像以上に困難があるように感じられる。
本書では、カウンセリング技法ごとに、説明と応答例を併記してあり、どういった表現がこの技法に当てはまるのか、非常に理解しやすい。
応答例は、できる限り同じ事例(3種類ある)を繰り返し使用されており、カウンセラー側の質問の形式によって、クライアントの回答が変わってくることを、具体的に実感することができる。
一つ一つの技法は、我々が普段から使用している質問と違いはない。ものによっては、対人支援の場に限らず、普段の会話でも使われる応答も多い。
その上で、専門家として、個々の質問をどういった効果を狙って問いかけるのか、自覚的でなければならないし、自覚するための枠組みを知るための導入として、有意義な内容と感じた。
カウンセリングの技法と言われた時に、理論的な分類をイメージする方もいると思う。本書では、研究者の理論に基づく分類ではなく、カウンセリング過程の進行に沿った分類となっている。面接スキルの向上を目指す方にとって、理解しやすく、使いやすい構成ではないだろうか。
進行過程に基づく分類は、理論による違いが少ないため、汎用的で理解しやすく、実用的と感じる。観察、傾聴、活動と進んでいく構成は、養成講座で傾聴を叩き込まれた後、次の方向性を見失っている人に、新たなマイルストーンを提示してくれる。
後半は、問題の定義、目標の設定、抵抗とその対応技法とつづく。
問題の定義、目標の設定も、知るとやるとでは大違いな部分であり、うまくいかないと感じている実務家や技能試験受験者には、参考になることも多いだろう。気をつけておきたいのは、この章で取り上げられているA-B-Cモデルは、エリスのABC理論とは異なる。注意してほしい。
抵抗について、一章を設けられているのも見逃せない。
試験はともかく、実務においては、程度の差はあれど必ず抵抗はある。常に関係構築を意識し続けることで抵抗の悪影響を最低限に抑えるのが、キャリアコンサルティングのベースにあると思われるが、それでは済まないクライアントに出会うこともあるため、意識的に対応策を準備したい方もいるだろう。どのような抵抗が見られるのか、ざっくり分類しても20項目と多岐にわたっているが、自分の苦手なところから少しずつ対策を進めていくつもりで、一度目を通していただければと思う。
本書は、このようにカウンセリング過程に沿った構成になっているが、その背景については、第1章で丁寧に説明されている。興味のある方は改めて参考にしていただきたい。
最終章の第10章にて、改めて理論に立ち戻る。各理論の特徴をおさらいするとともに、それらを超えていく心構えについて述べられている。キャリアコンサルタントが理論に踏み込む頻度は、それほど高くないと思われるが、心理職や医療福祉職との連携が想定される場面では、基礎知識として知っておくことは、意義のあることだと思われる。
スキルの向上を目指す方はもちろん、日々、対人支援に向き合っている方にもおすすめしたい一冊だ。
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