【書評】コーチングのすべて(著:J. オコナー、A. ラゲス)

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コーチングの成り立ち・歴史から、流派、理論に至るまで、すべてを網羅した一冊。

著者は国際コーチング連盟(I C C)共同設立者のジョセフ・オコナーとアンドレア・ラゲス。

コーチングを深く知りたいと思った際に困惑するのが、「結局、コーチングとは何なのか」。

スポーツのコーチと何が違うのか、いざ問われるとぼんやりとしてしまいがちだ。

本書第1部では、「コーチ」の語源や、スポーツのコーチにも触れながら、コーチングの歴史について丁寧に書き起こされている。

第3章の、コーチングが広まった背景についての考察も興味深い。キーワードだけ挙げると、社会からの孤立、独立した個人、インターネットの台頭、社会変化の加速化だそうだ。

コーチングは自己啓発から始まった、と断言しているのもいさぎよい。

人間性心理学と東洋哲学をルーツとし、構成主義と言語そのものの研究により現在の形に至ったという説明は、腑に落ちるものがある。

本書第2部では、コーチングのモデルが整理されている。7つの章から構成されており、インナーゲーム、G R O W、N L P、ポジティブ心理学、行動コーチングなどが取り上げられている。

第10章「インテグレーテッド・モデル」では、コーチングの中核的モデルを示しており、大変興味深い。内的か外的か、個人的か集団的かという2つの軸から、4つの観点が提示されている。

また、基本的なコーチング・プロセスは3つである。

クライアントを支援し、その関心を方向づける。クライアントの問題に対して、本人の思考を超えるような意味づけをし、意見を与える。クライアントが行動を起こす手助けをする。

3つのプロセスについての詳細な検証では、先に紹介した各理論の特徴も改めて取り上げられる。

同じプロセスであっても、クライアントの問題や個性により、効果につながりやすい技法は異なり、その種類を増やしていくことがコーチにとって重要となる。

また、コーチの信念、コーチング関係の内的特性としてまとめられている項目があるが、キャリアコンサルタントにも通じるものがある。

人間の本性に対する楽観的な見方や、現実は人間の手によって作られ、構築されたものなら解体できるという考え方は、共感できるものだ。ラポールや傾聴も、重要な内的特性としてあげられている。

第3部は、コーチングの効果である。医療モデル(既存の症状に当てはめる、症状がなくなるもしくは減少すれば効果があったとする)ではない効果測定について、いくつかの例が紹介されている。

最後に、コーチングが専門的な職業であるかの考察もされているなど、全体を通して真摯な姿勢に貫かれている。

コーチングについて不安を感じたときには、本書を手に取ってもらいたい。コーチングに関わる方にとって、バイブルとなりうる一冊ではないだろうか。

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