キャリアの分野で最も知られている6角形モデルの提唱者、ホランドの研究成果をまとめた一冊。理論の説明が詳細に行われているのに加え、その正当性に関する評価についても、30年以上にわたって行われた多くの実証的根拠がまとめられている。
6角形モデルは、パーソナリティの6タイプが、その類似性に基づいて、6角形に配置されるもの。隣同士のパーソナリティ・タイプは類似性が高く、対角にあるパーソナリティ・タイプはその理論的な関係が最も薄い。
パーソナリティ・タイプは、R I A S E Cの6つのアルファベットで表される。各アルファベットは、順に、現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的のパーソナリティ・タイプに対応する。
また、働いている環境にも、同様の6つの環境モデルがあるとされる。本人のパーソナリティ・タイプと環境モデルの一致度が高いほど、より活躍しやすく、満足度も高くなる。
直感的にも大変理解しやすいモデルで、大いに普及したのも頷ける。V P I職業興味検査や自己チェック調査表(S D S)により、パーソナリティ・タイプを知ることができる。
職業については、職業名辞典(D O T)やホランド職業コード辞典(D H O C)で労働環境の特徴を知ることができる。新しい職業では、その職業の就業者の平均得点から求められる他、職位分類目録(P C I)で求めることもできる。
6つのタイプの一致度だけでなく、下位タイプ(パーソナリティのパターン)、一貫性、分化度、同一性といった2次的概念を援用することで、より精緻なアセスメントを行うことが可能である。
わかりやすく、使いやすい概念であるが、ホランド自身が述べている通り、決して固定的なものではないことに留意したい。相互にずれがあった場合、パーソナリティ・タイプが環境モデルに近づいていく場合もあれば、環境モデルを変える(転職する)場合もある。
一致性や一貫性が低い場合は、成果を上げづらく、満足度が下がりやすい。場合によっては、メンタル面を気にかけておく必要があるかもしれない。
最終章「実践上の応用」に挙げられている、キャリア介入行動についての提言も示唆に富む。
人は誰でも、「自分なり」のキャリアや仕事についての考えを持っている。その妥当性は様々だが、主な類似点として、本書の理論と似たような構造に因っている点がある。だからこそ、利用しやすく、人気があるのかもしれない、と著者は述べている。
永遠のスタンダードとして、大切にしたい。
コメント