著者は、大手商社の「キャリアカウンセリング室」の初代室長。
立ち上げ時期は2001年と非常に早く、日本ではキャリアという概念すら一部でしか知られていなかった頃だ。
社員が様々な悩みを相談できる機能を社内に持つことが必要である、との思いで、著者自身が会社に対して積極的な働きがけをおこない、部署としての「キャリアカウンセリング室」の設置に至った。
その道のりではさまざまな壁にぶつかっており、そこから得られたノウハウを余さず紹介されている。
企業内キャリアコンサルタントが企業と向き合った際に直面する課題が幅広く取り上げられており、これから企業内キャリアコンサルタントとしての活躍を目指す方にとって、様々な場面で役立つ本。
前半は、一般的なキャリアコンサルタント業務について、歴史や事例も交えながら、企業内キャリアコンサルタントの立場から説明されている。この部分も実務的に学ぶべきところが多い。
この本ならではの特徴は後半部分。「キャリア相談室立ち上げを考える企業へのアドバイス」は、自ら動いてキャリアカウンセリング室を立ち上げた筆者ならではの説得力にあふれている。
すぐに説明できる準備はできているか、など、キャリアコンサルタントである以前に、ビジネスパーソンとして、チャンスを捉える心掛けから述べられている。理論書とは違った生々しいノウハウだ。
会社にいると頻繁に遭遇する、キャリアカウンセリング以前のトラブル(決して教科書には載っていない)の数々についても、丁寧に取り上げられているのが、本書の魅力だろう。
筆者の勤める企業以外のケーススタディも2件取り上げられており、また違った形での企業へのキャリアカウンセリングの導入事例も知ることができる。企業内で活動しているキャリアコンサルタントには欠かせない一冊ではないだろうか。
また、最後にまとめられている「もっと勉強したい人のための役立つ18冊」も見逃せない。これもぜひ参考にしたい。
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