【書評】トランジション(著:W.ブリッジズ)

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転機(トランジション)は「終わり」から始まる。

本書では、内面の変容を伴う変化を転機(トランジション)と呼び、単なる環境の変化(チェンジ)とは異なるものとしている。

転機は不意に襲いかかるものであり、「終わり」「ニュートラルゾーン」「新たな始まり」の3つのプロセスからなる。

離婚、解雇など、その瞬間には、人生の終わりとも感じられるイベントは、トランジションの始まりであり、長いニュートラルゾーンを経て、新たな始まりへと導かれる。

本書のアメリカでの初版は1979年、著者はまだ40代半ばだった。

初版も50万部以上売れたとのことだが、本書は初版から25年後、70歳の著者自身によってなされた改訂版の翻訳である。

改訂版では特に、第4章の「仕事とトランジション」が加筆されており、中高年のキャリアを考える上で、よりいっそう理解が深まる内容となっている。

トランジションの期間の長さは、意図的に短くすることはできない。ニュートラルゾーンの時期には、意識的に動くことが無意味である。

古い考え方が全て手放され、再生に必要なエネルギーが充電されていくと、思いがけないきっかけとともに新たな始まりへと導かれる。

トランジションの期間は、外面的には、何もない空白の時期とは限らないが、自身の中では、全てがリセットされていく。

伝統的な社会での参入儀礼や、ギリシア神話のエピソードを散りばめ、われわれ一人一人に起こっているトランジションは、人生において重要なイベントであると感じさせてくれる。

トランジションを経験している最中は、決して心地よいものではない。しかし、誰にでも必要なものであり、実りある人生を送る上で不可欠なものでもあるのだ。

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