【書評】コーチング入門<第2版>(著:本間真人、松瀬理保)

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1冊でコーチングの全体像がつかめる入門書。日経文庫の中の一冊で、手軽に手に取ることができる。

近年、コーチングに関する本は多数目にすることができるが、それぞれの流儀・流派に基づいているようで、どれを選べば良いのか迷ってしまう。

本書は、コーチングのエッセンスに絞って紹介されており、比較的中立な立場で、基礎的な部分の知識を得ることができる。

入門書というが、コーチングの概念やスキルの紹介にとどまらず、ケーススタディも充実している。

こういった対人スキルは、やってみないとわからないことも多いため、少しでもイメージする助けとして、ケーススタディは欠かせないと思う。

本書で取り上げられているケースは、ビジネスの現場で直面しがちなケースが複数取り上げられており、理解しやすく、自分でもすぐに実践してみたいと思えるものとなっている。

組織内で使用されることを想定するならば、コーチングは、ティーチング(教え込むこと)と比較されることも多い。

ティーチングが知識や技能を教え込むものであるのに対して、コーチングの力点は、一人ひとりの内側にある「可能性、能力、やる気、自発性、責任感、アイデア」を引き出すところにあり、日々変化していくビジネス環境に随時対応できる人材を育てていくには適している。

コーチングのスキルとして、傾聴があげられていることも見逃せない。

傾聴はキャリアコンサルタントにとっても重要なスキルであり、クライアント中心に進めていくという面は共通している。

その上で、コーチングでは、ビジネス上の目標の設定とその達成が重視されており、必ずしもクライアントの興味・関心や生きがいといった部分には触れないこともある。

また、コーチングの技法は、現場で使うことが想定されている。日々の上司・部下の関係の中で、無理なく成果を上げていくためのツールとして有力なものだ。

ただし、ビジネスが火事場状態の際には、コーチングの使用は推奨されていない。火事場では明確な指示・命令を行なってほしい。

企業領域で活動するキャリアコンサルタントであれば、コーチング的な対応をする機会は多いだろう。本書を用いて、ご自身の対人支援スキルの整理と棚卸をしてみてはいかがだろうか。

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