【書評】お祈りメールきた、日本死ね(著:海老原嗣生)

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この、インパクトの強いタイトルは、新卒の就活生によるTwitterへの投稿で大変話題になったものから取られている。

念のために、「お祈りメール」とは、「企業からの不採用通知メール」を指しており、企業からのメール末尾に半ば定型表現として「今後のご活躍をお祈りいたします」と付記されているところから来ている。

たくさんの会社に応募する学生は、次々に数多くの「お祈りメール」を受け取ることになり、何もかも嫌になってしまうこともあるだろう。

現代の就職活動に対して、問題意識を持っておられる方は多いことと思う。

インターネットの普及によって、大量応募・大量不採用につながり、表題のようなメールが大量に届き、学生の自己肯定感を大きく蝕んでいることは、簡単には見過ごせない問題である。

本書では、こういった就職活動論争に対して、100年前から変わっていないと述べる。

今の30〜40代が経験した就活、50代の経験した就活、さらには大正時代に行われていた就活まで、世代ごとに振り返ると、求人と採用のバランスがうまくいっていたことなど、過去に一度もなかったようだ。

日本型の採用慣行と欧米型との比較も行われており、採用活動の形態は企業および社会のシステムとも強く関連するため、一足飛びに変化させられるものでもない、とも述べられている。

100年前から同じような状況があったとはいえ、著者も手をこまねいているだけではない。

この本の白眉は、第5章「日本が変えねばならない本当の短所」である。

現時点(2016年)で考えられる3つの解について、著者の立場から論説し、最善策とその補足を提案している。さらに中小企業の課題や、ブラック企業への対応についても触れられている。(ブラック企業の3分類、絶対的・不作為・相対的ブラックも興味深い)

タイトルのインパクトに比して、過去の事例をしっかり考察された一冊。

採用業務に関わる方には、一度手に取ってみていただきたい。

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