共働きでも専業主婦でも、とにかくしんどい構造になっている。そのことを、さまざまな角度から分析した、読み応えある一冊。
いっときの、専業主婦をうらやましく見るような論調ではなく、といって、仕事と家事を両立する女性を賛美するのでもない。
それぞれの立場の実例や各種調査の結果を詳細に分析することで、どちらもしんどいよね、という結論に至る。
本書は、東洋経済オンラインの連載、「育休世代V S専業主婦前提社会」などを元に、大幅に加筆・修正して出版されたもの。
各章で取り上げられる事例は、これまでの著者の知見をベースにしているが、さまざまなトピックがまんべんなく取り上げられており、この一冊で、この問題について、幅広い視点から知ることができる。
戦後、数十年をかけて、専業主婦の存在を前提とし、専業主婦のいる男性が最大限に力を発揮できるような形に、日本社会の構造は最適化されてきた。
無意識のうちに内在化してしまった基準に対して、多くの女性たち、そして男性たちも、明確な声をあげて反論することができなかった。
本書によれば、見えないところで、自分達の最適解を見つけた夫婦も数多くいた。ただし、彼らもまた、一歩外に出れば、それを積極的に口外することはない。
著者の丁寧な調査と、適切な発信により、これらの事例は単に珍しいものではなく、参考にすべき事例として取り上げられるようになった。
コロナをきっかけに、男性が家にいたり、男女問わず自宅でも仕事ができる幅が広がったりと、これまでと異なる働き方・暮らし方が受け入れられやすくなった。
もし今、自身のやり方に不安を感じている方がいたら、本書を開いてみてほしい。自分達の最適解は、自分達で作るしかない。他の人からの理解はひとまず気にしない。先人たちのあゆみが、勇気をくれるだろう。
新たな働き方として取り上げられたさまざまな事例が、どれも普通なこととして振り返られる日が、早く訪れることを期待したい。
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