【書評】ミルトン・エリクソン心理療法(著:D・ショート、B・A・エリクソン、R・エリクソン−クライン)

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ブリーフセラピーの源流ともいわれるミルトン・エリクソンの心理療法について、数多くのケースから、そのエッセンスを6つのストラテジーとしてまとめている。ミルトン・エリクソンの用いる技法は多岐にわたるが、本書では「レジリエンス(立ち直る力)」をキーワードとし、催眠や情動的プロセスに依存しない形での紹介となっている。

冒頭にて紹介されるミルトン・エリクソンの生い立ちの略歴をみると、彼にとって、自身のポリオの後遺症からの回復が非常に重要な経験だったと思われる。一つひとつの積み重ねが大きな改善につながるということを、彼自身が自らの再生プロセスとして実践した。「不可能なこと」をやり遂げるには、実行可能な小さなことを見つければいいという信念から、多くのクライアントたちに創造的な人生を与えることに成功した。

関節炎の男性のケースが繰り返し紹介されるが、このケースからわかるのは「魔法」は存在しなかったということである。クライアントの「希望とレジリエンス」を活性化させた結果として、有益な臨床的目標が達成された。

本書には数多くのケースが取り上げられている。そのひとつ1つの言葉の中にも回復につながる要素が複数含まれており、教科書的に学ぶには複雑とも感じられる。第II部では、こういった「臨床的直感」とされてきたものを、より正確には「暗黙の論理的思考」であるとし、6つのストラテジーとして、排他的ではない形でまとめている。

6つのストラテジーはシンプルで、すぐに使ってみたくなりそうな魅力に富んでいる。だが本書内では、誤った使い方に対する注意喚起も頻繁に行われている。取り上げられているケースはあくまで一部を抜き出したものであり、実際には信頼構築やクライアントの特性を知るために十分な時間が費やされていることに留意する必要がある。また現代の常識に照らせば、そのままでは到底使えないケースもあることにも注意が必要だろう。

本書では、癒しとは回復過程における内的リソースの活性化である、と述べられている。また、心理療法は学びのプロセスである、とも。触媒であるセラピストはただ、患者が活動できるように刺激を与えるだけ、ということになる。

「この問題の解決法を見つけなくてはならない」と、完全主義的な目標と自己中心的な考えで進めるのではなく、未来に対する患者の「レジリエンスと希望」という観点で考えるのがエリクソンのやり方であった。本書から得られる学びは、心理療法家にとどまらず、広く対人支援を行う人にとって有用であり、助けとなることだろう。

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