ここから数冊、2級受験に役立ちそうな本の紹介をしていく。本日は、ACCN公認の中からの一冊。今回改めて読み直し。非常に良かったので、こちらで紹介したい。
購入した当初は、なぜこの本が勧められているのか、よくわからなかった。初学者の目には、どれも普通のことが書いてあるようにみえた。当時は、目の前のクライアントとの相談を集中してやり切ることに自分の意識の中心があり、やり取りしている言葉をなぜ選んだのかを一つ一つまで深掘りして考えていなかった。感覚的には把握しているつもりだったが、結果がうまくいけば過程はなんでもいいという姿勢だったとも言える。
2級技能士では、自分自身で自分の相談プロセスがどこにいるのか、明確に意識しながら進める必要がある。本書には、その手がかりが丁寧に記されており、訓練の第一歩としておすすめだ。
全体を通して、なんらかの理論を意識しながら進めることが前提となっている。論述も面談も考え方は同じだ。セッション全体を通して、一つにまとまった理論的背景が感じられるように仕上がるのが理想とされているようだ。
実際の業務では、折衷型で進めることになるし、場合によっては途中でゴールや見立てを修正していく場合もあると思うが、試験ということで、今回の面接において自分の依拠している理論は何で、理想的にはこのように進められますということを証明しなければならない。
理論の区別は各種あるが、本書では、以下の4つの区分としている。構造因子論、発達論、社会的学習論、意思決定論である。
論述や面談で、なにげなく書いたり話したりしている見立てや提案が、どの理論に基づいているのか、裏付けを持って説明できることを目標としている。
論述においては、理論的な統一感を持って記載することで、全体の流れが良くなり、読者(相談の受け手)も素直に理解することができる。私自身、この手法を実践してみて、提案する個々の方策の内容が同じであっても、答案全体を通して読んだ際の印象が大きく変わると感じた。
面接については、ロープレの動画がDVDで同封されている。こちらも理論別である。同じクライアントに対して、異なる理論に基づいてアプローチしており、それぞれに異なった展開となる。視聴するだけでも興味深いコンテンツと思われるが、それぞれのロープレを自分でも追体験することによって、自分が普段どのような理論を意識して相談を進めているのかの手がかりともなる。普段の自分に近いと感じる理論から始めて、面談プロセス理解の解像度をあげていき、慣れてくれば異なる理論に基づく応答手法を身につけていくこともできる。
このDVDの使い方について、テキストに説明がある。動画の途中で止めて考える、とあるが、正直なところ難しい。考えるのも難しいし、動画の応答しか正解がわからないので、違った場合のはずれ度合いが独学ではわからない。
慣れないうちは、自分に合いそうな動画を一つ選び、自分でもなぞってみることから始めると良いと思われる。英会話学習でいうところの、シャドーイングだろうか。選ぶケースはどれでもよいが、個人的には、流れが素直で話が最後まで到達できる、2つ目のケース(発達論に基づく)がおすすめ。
ある程度身に付いたら、他の進め方も見てみる。実際の面談事例(ロープレ)をベースに、理論を振り返ることで、個々の応答と理論との連携が意識され、専門家としての深みも増していくだろう
論述と面接試験で、進め方に大きな差異がないかについても意識しておきたい。2級で求められる要件に「安定的にキャリアコンサルティングが行えること」という項目がある。
実際の試験においては、論述試験と面接試験の間に時間が空く。論述試験をフリースタイルで乗り切った方は、自分がどのような論理展開でまとめたか、忘れてしまう恐れがある。できれば論述の回答を書き起こしておき、どういう論理展開にしたか、思い出せるようにしておくと良い。
まだ受験前で余裕があるのであれば、論述対策として、自分の型を作っておいてもいい。その際、本書で取り上げられている理論の分類も参考にしておくと、面接とのつながりも意識しやすいだろう。論述、面接とも、型にこだわり過ぎるのは逆効果だが、型があってこその応用であり、初学者の方は参考にしてみて欲しい。
本書自体が良書であることに加え、動画コンテンツも得難い資料であり、キャリアコンサルティングを本格的に取り組まれる方には、一冊入手して欲しい本。惜しいのは、DVDを視聴できる環境が最近は少なくなっており、すぐに視聴できない場合があること。今後もし可能であれば、公式のホームページから視聴できると活用の場も広がると思われる。ACCNの方にはご検討いただきたい。
購入はこちらから
ACCN公式のページはこちら
https://www.career-cc.org/book/text6.html
最後に、本書の第1章には、技能検定がどのようなものか、まとめて記載されている。試験の形式やレベル感、出題範囲とその細目など、つい読み飛ばしがちな部分かと思うが、少なくとも一度は目を通していただくことをお勧めする。特に再挑戦の方こそ確認していただきたい(前回から間が空いている方は、技能試験の公式ページの最新情報も)。できれば記載内容を手で書き起こしてみると、自分が評価されているポイントを実感しやすいかもしれない。
敵を知り、己を知ることで、求める成果を掴む、本記事がその一助となれば幸いである。
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