定年が、延長されていくだけでなく、消滅していく。では、どのように行動していけば良いのか。いくつもの事例とあわせて、著者の考えが提案される。
前半は、現在までの幾度かにわたって行われた定年延長についての振り返りと、その背景にある日本社会の危機的状況について、トヨタやI T企業の事例をもとにまとめられている。後半は、前半で述べられた状況に対して、どのように対処していくべきか、筆者の考え方がまとめられている。
論調としては、新しい時代に向けて、学びの姿勢を身につけて欲しい、というもの。筆者自身が学びを続け、新しい時代に即してやってきた自負もあるのだろう。
学び続けることで、自身の希少価値が高まり、どこかで働くことができる。
ただ、希少なものは、ニーズも少ないようにも思われるが、どうだろうか。
また本当に必要な分野については、企業側も総力を上げて育成している。
今後はA I分野などの重要度が高まっていくと本書でも取り上げられており、最先端の分野に対応できる優秀な学生をいかに育てるかについても、試案といくつかの事例が挙げられている。
これは中高年に対しても当てはまるだろうか。
学生からですら優秀者を選抜しようと躍起になっている、という論調と、企業からドロップアウトしかかっている中高年がいくつになっても学び続けよう、というのは、噛み合っていないような気もする。
社会的にニーズがある分野に、興味も適性もない場合はどうなるのだろうか。これは年齢と関係ない。
選抜されなかった学生、そして中高年にとっても学びやすい環境となってきている。それは確かだろう。
その上で、筆者の言うような希少な専門性が、うまくハマるような分野があるのか、その確率はどの程度なのか、本書内では詳細な検討はされていない。
筆者は、経済分析と経営コンサルタントを組み合わせて、ご自身の職業を生み出したそうだ。本書の論調を振り返れば、納得だ。
大きな流れに巻き込まれていく個人は、自己責任で生きていくしかない。学ぶことが苦手だとかいっている場合ではない、それが本書の結論である。
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