【書評】私たちはどう働くべきか(著:池上彰)

books

新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会は大きな影響を受けた。コロナが原因で失業した人も、6万人を超えている(2020年6月時点)。

そもそも「働く」とはなんだろう。

中学生向けに行われた公開授業をベースに、コロナで働き方がどのように変わるのか、著者の視点を加えて、まとめられている。

「働く義務」は、国民の三大義務の1つである。中学生むけの話だが、大人でも覚えていない人も多いのではないだろうか。

ちなみに、三大義務は「教育」「勤労」「納税」である。働く能力のある人には働いてもらい、税金を納めてもらう。その税金で、国民を守るために、さまざまなことを整備する。教育制度も整備し、働く能力の向上を図る。そういう仕組みだ。

コロナの影響で、働き方が大きく変わった。あるいは、A Iの導入によって、これまでの仕事を人が行う必要がなくなるかもしれない。

そんな不安に寄り添いつつ、著者は、これまでの時代を振り返り、働き方の変遷について説明する。

戦後人気だったのは、石炭産業、砂糖産業。繊維会社やフィルム会社の盛衰、銀行に就職したエリートたちの行く末など、さまざまな例が挙げられる。10年、20年という期間でみれば、永遠に栄えている産業などないと痛感させられる。

著者が就職した頃には、女子アナの定年が25歳だった。そんなエピソードも紹介されている。現在から見ると衝撃的だ。

この公開授業では、中学生に宿題が出されている。「周りの大人がどんな仕事をしているのか、そしてどうしてその職業についたのか聞いてくる」というものだ。

家計のためという目的もあれば、社会貢献したいという気持ちもある。

希望した会社に就職したけれど望んだ部署ではなかったが、それも縁だと考えて今も同じ部署で働いている。

車の修理を仕事にしているが、その仕事が大好きで、うちに帰ってきても車をいじっている。

大人たちが仕事についたきっかけも、ひとそれぞれにあり、今もいろいろな思いで仕事をしていることが、中学生にも伝わったようだ。

その上で著者が言いたかったのは、「夢を大事にしてほしい」。やってみたい夢が全員かなうというわけにはいかない、それでも夢を大事にしてほしい、という。

小学校6年生の時に出会った一冊の本「続 地方記者」。中学校での天文気象部。新聞記者になりたい、気象庁の予報官になりたい、そういった夢を持っていた。しかし、新卒での就職先は、N H Kの記者。その時は、夢は叶わなかった。

必死にN H Kでの仕事をやり遂げ、気がつけば、気象庁の担当になっていた。N H Kを辞めてフリーランスになってしばらく、新聞に連載を持つようになった。結果的に自分の夢がある意味ではかなったといえる。

その他にも、結果的に夢がかなった事例が、いくつも紹介される。だんだん駆け足での紹介となっていくが、この辺りの1つ1つのエピソードも面白いので、ぜひ本書にあたってみてほしい。

最後に筆者が言うのは、「働き方は生き方」。

中学生の夢、あるいはそれ以降に出会うさまざまな出来事から感じたことが、人の生き方を決め、働き方を決めていく。

働く環境が大きく変わっていく今だからこそ、自分の夢を再確認し、その方向に一歩でも進んでみたらどうか。誇りを失わない働き方を、そんな著者からのエールが伝わってきた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました