【書評】若者は本当にお金がないのか?(著:久我尚子)

books

政府統計をいかに読むのかについては、キャリアコンサルタントの学科試験においても(特に労働統計に関して)問われている要素の1つである。本書では、若者の動向に焦点を当てて、様々な統計を読み解いている。

誰も皆、自分が若者だった時代があり、若者とはこういうものだ、というイメージを持っていると思う。ただ、時代が変われば行動様式も変わるし、実際にいつの時代も「今の若者は・・・」と言われてしまうことからも、自分のイメージしている若者像は必ずしも現代の若者像と一致しているとは限らない。

いかにしてこのイメージのずれを補正するか、若年者支援を行う方にとっては重要なことではないだろうか。自ら、現代の若者と触れ合い、失敗しつつ学ぶのも1つのやり方だろう。ただ、相手をしてくれている若者側が気を遣ってくれたり、本人の思い込みが反映されてしまったりすることで、結局、本来の姿とずれてしまっていないだろうか。

本書では、統計データを用いることで、現代の平均的な若者像について、以前の若者像との違いをバイアスの少ない形で知ることができる。現在(本書の出版は2014年)の若者は、バブル期の若者と比べて、可処分所得や時間のゆとりが多く幸福度も高いという結果には、驚かされた。用いられている統計の多くは政府統計であり、統計データとしての信頼性は高い。

信頼性に疑問のある方に対しては、第1章に統計データの正しさの見極め方がきちんと記載されているので、それに基づいてご自身でも確認してみると良いかもしれない。虚心坦懐に本書と向き合うことで、思いがけない自身の思い込みに気づくこともあるだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました